「原材料のロット番号、どこかに記録はしているけれど、出荷先と紐付けて追えるか?」と問われたとき、Excelファイルを何枚もめくって1時間以上かかった——そんな経験を持つ中小食品製造業の担当者は、今まさに転換点に立っています。
なぜ今、ロット管理・トレーサビリティ業務を棚卸しすべきか
2021年以降、食品衛生法の改正によりHACCP(ハサップ:食品製造の安全管理手法)に沿った衛生管理が中小食品製造業にも義務付けられています。原材料の入荷ロットから出荷先までの一貫した記録保持は、行政指導・立入検査への対応の根幹です。「記録はある、でも追えない」では、法的要件を満たしているとは言えません。
異物混入や原料起因のアレルゲン問題が発生した場合、「どのロットの原料を使って、どの得意先に何ケース出荷したか」を15分以内に答えられるかどうかが、被害拡大の分岐点になります。Excelで管理している場合、ファイルを横断して集計するだけで平均2時間以上かかるケースも珍しくないとされています。
製造担当・品質担当・出荷担当がそれぞれ別のExcelシートを持ち、ロット番号の記載ルールがバラバラになっている。これはほぼすべての中小食品製造業が抱える構造的な問題です。既存ERPは高コスト・過剰機能で導入障壁が高く、だからこそFS Blueprintを使った自社業務の棚卸しから始めるアプローチが現実的な解になっています。
FS Blueprintを使った棚卸しシートの設計
FS Blueprint(FlowSyncの業務設計支援ツール)を使った棚卸しでは、食品製造の工程ごとに「どこでロット情報が記録・参照されているか」を可視化するシートを作ります。以下の5工程を縦軸に、横軸に記録項目を並べた構造が基本です。
納品書の仕入先ロット番号を「原材料入荷記録シート」に転記するのが現状の業務。FS Blueprintでは「入力項目:仕入先名・品目コード・仕入先ロット番号・入荷日・数量・検品ステータス」として定義します。
ここが最も属人化しやすい工程です。「製造番号(自社製造ロット)」に対してどの原料ロットを何kg使ったかを記録するFlowSyncアプリの「配合実績入力画面」が中核になります。画面遷移は「製造番号選択→原料スキャン→数量入力→確定ボタン」の4ステップが目安です。
出荷伝票番号・得意先コード・製造ロット番号・出荷ケース数を記録し、「ロット追跡レポート.xlsx」として出力できる構成にしておくことで、回収時の初動対応を大幅に短縮できます。
FS Blueprintのシート設計では「現状の記録媒体(紙/Excel/口頭伝達)」「記録タイミング(リアルタイム/後まとめ)」「担当者(固定/複数)」を各工程に対して明示することが、後工程のスコアリング精度を高める鍵です。
棚卸し結果をスコアリングする3軸の判断基準
棚卸しで洗い出した業務をFlowSync内製化の対象として優先順位付けするために、以下の3軸でスコアリングを行います。各軸を1〜3点で採点し、合計スコア7点以上の業務を「即時移行対象」とするのが目安です。
毎日複数回発生する記録業務(例:入荷検品・製造番号発行)は、紙やExcelのミスが積み重なるリスクが高く、FlowSync化の効果が大きい。毎日=3点、週複数=2点、月次=1点で採点します。
配合実績や出荷ロット紐付けなど、1つ欠けると前後のトレーサビリティが成立しない業務は影響度が高い。途絶=3点、遅延=2点、参考程度=1点で判断します。
「Aさんが休むとその日の製造記録が翌日まとめ入力になる」という状態は属人化度が高い。担当者が不在でも業務が回るかどうかが判断基準。1名依存=3点、2〜3名=2点、誰でも可=1点です。
「半日で動けるFlowSyncアプリの開発順序」を決めるための道具です。
合計9点満点中7点以上の業務から着手すれば、3ヶ月以内に成果が出ます。
半日ワークの進行例:午前〜午後の具体的な流れ
午前(3時間):業務フロー洗い出しと棚卸しシート入力
参加者は製造・品質・出荷の各担当者と管理者の計4〜6名が理想です。FS Blueprintのシートを投影しながら、工程ごとに現状の記録媒体・担当者・記録タイミングをヒアリングして埋めます。1工程あたり15〜20分が目安で、5工程で最長100分。残り時間で「記録が欠ける・遅れる場面」を付箋でメモします。
午後(2.5時間):スコアリング〜FlowSync移行対象の確定
午前の棚卸し結果をもとに、3軸スコアリングを全員で実施します。議論が分かれた項目は多数決ではなく「追跡影響度」を優先して決定するルールを先に合意しておくとスムーズです。スコアリング完了後、「FlowSync移行優先リスト」を出力し、第1フェーズで内製するアプリを2〜3本に絞り込みます。
定量効果の目安:入荷検品記録をFlowSync化した中小食品製造業の事例では、ロット番号の転記ミスによる確認作業が1件あたり約20分→約30秒に短縮されるとされています。月間15件発生していた確認業務の合計が約5時間から約7.5分に削減された計算になるとされており(棚卸しワーク当日のスコアリング段階で予測値として算出可能)、導入効果の参考値としてご活用ください。
まとめ
- 背景の整理:HACCP対応・クレームリスク・Excel限界の3つが、今すぐ棚卸しに着手すべき理由
- FS Blueprintの活用:入荷〜出荷の5工程を縦軸にした棚卸しシートで、ロット情報が記録される業務を網羅的に可視化できる
- スコアリング3軸:「記録頻度」「追跡影響度」「属人化度」でFlowSync内製化の優先順位を半日で決定できる
- 半日ワークの設計:午前に棚卸し・午後にスコアリングという進行で、当日中に移行対象アプリ2〜3本を確定させる
- 次のアクション:棚卸しワークの結果をもとに、まず追跡影響度が最も高い1業務のFlowSyncアプリ内製から着手することが最短で成果を出す道筋