「受注はExcelで管理、金型の割付は担当者の頭の中、採算は月末にまとめて計算——気づいたら誰も全体像を把握していない」。樹脂成形・射出成形メーカーの多くが抱えるこの状況、どこから手をつければいいのか分からないまま、DX化の一歩が踏み出せずにいます。
なぜ樹脂成形メーカーの業務棚卸しは難しいのか
樹脂成形・射出成形業界は、多品種少量化が急速に進んでいます。1ロット数十個から数百個の製品が、数十種類の金型を使い回しながら日々製造されるため、業務の「つながり」が極めて複雑です。
受注管理・金型割付・採算管理は本来ひとつの流れですが、多くの現場ではそれぞれ別の人・別のツールで動いています。
- 受注情報:担当営業がExcelで管理
- 金型割付:段取り職人が紙の金型台帳や頭の中で管理
- 採算確認:経理が月末に手集計でまとめる
この分断が、「どの受注がどの金型を使い、利益が出ているのか」をリアルタイムで把握できない原因になっています。
加えて、金型は複数の製品に共有されることも多く、金型番号・製品コード・受注番号の三者関係が口頭で伝達されるケースも珍しくありません。棚卸しを試みても「どこからどこまでが一業務なのか」の境界線が引けず、ヒアリングが空中分解してしまうのです。
FS Blueprintの使い方:業務フロー一覧表を30分で作る
FS Blueprintは、FlowSyncで内製化する業務アプリを設計する前段階として、現状の業務を構造化して可視化するためのフレームワークです。樹脂成形メーカーの場合、まず次の7項目を「起点シート」として書き出すことから始めます。
① 受注番号 ② 製品コード ③ 金型番号 ④ 成形チャージ(1ショットあたりのコスト) ⑤ 材料費 ⑥ 外注先(表面処理・組立など) ⑦ 納期。この7項目は、受注から出荷までの全業務を「一本の糸」でつなぐ業務フロー地図の経緯線になります。
次に、この7項目それぞれについて「誰が・いつ・どのツールで・何を確認して・どこへ渡すか」を付箋感覚で書き出します。FS Blueprintのテンプレートにはこの書き出しを促す列が用意されており、A3用紙1枚に収まる業務フロー一覧表が約30分で完成します。
樹脂成形特有のポイントは「金型割付」を独立した業務ステップとして記載すること。受注確定→金型割付→成形スケジュール登録→材料発注→成形実績入力→外注指示→採算集計、という7ステップの縦軸が見えてくれば、棚卸しの8割は完了です。
Before → After:業務フロー把握の変化
受注Excelと金型台帳(紙)と採算集計シートがバラバラに存在。月次の採算確認に1件あたり約45分かかっており、月20件の受注に対して月間15時間以上を集計作業に費やしていたとされています。金型の稼働状況は段取り担当者に電話で確認する必要があった。
FlowSync上の「受注登録画面」に受注番号・製品コード・金型番号を入力すると、成形チャージと材料費が自動計算され、採算サマリーが即時表示される。採算確認は1件あたり約3分に短縮されるとされています。月間集計時間は15時間→1時間以下へ。出力ファイル「受注別採算レポート.xlsx」は画面右上の【CSV出力】ボタン1クリックで取得可能。
スコアリングで内製化の優先順位を決める
業務フロー一覧表ができたら、次は「FlowSyncでどの業務から内製化するか」を決めるスコアリングを行います。FS Blueprintでは「頻度 × 影響度 × 属人化度」の3軸で各業務を5段階評価します。
その業務が月に何回発生するか。射出成形では「金型割付変更」「材料ロット切替」「外注指示書発行」などが高頻度業務に該当します。月50回以上→5点、月20〜49回→4点…のように点数化します。
その業務でミスや遅延が起きたとき、受注・品質・コストへの影響がどれだけ大きいか。金型割付ミスは直接的な成形不良と金型破損リスクにつながるため影響度が高くなります。
その業務が特定の担当者なしに回るか。「金型の癖を知っている人がいないと割付できない」状態は属人化度が最高点になります。この軸はDXの緊急性と直結します。
スコアリング表は15〜20業務を並べて比較できるとされており、「なんとなく重要そう」ではなく数値で優先順位が見える化されます。
樹脂成形メーカーでは多くの場合、「金型割付管理」「受注別採算集計」「外注指示書発行」の3業務が上位にランクインします。この3業務をFlowSyncの第1弾アプリとして設計することで、導入効果を最短で現場に届けることができます。
半日ワークで完成するFS Blueprint成果物のイメージ
FS Blueprintのワークショップは、経営者・製造責任者・営業担当の3名が揃えば半日(約4時間)で完結するとされています。午前中に業務棚卸し、午後にスコアリングと画面設計の叩き台作成、というタイムラインが標準です。
① 業務フロー一覧表:受注〜採算までの全ステップを可視化したA3シート。現状の課題(二重入力・口頭伝達・転記ミス)が一目で分かる。
② 移行対象一覧:スコアリング結果を基に、FlowSync第1弾〜第3弾の対象業務を優先順位付きで整理したリスト。社内の合意形成資料としてそのまま使える。
③ FlowSync画面設計の叩き台:第1弾アプリの主要画面(受注登録画面・金型割付画面・採算確認画面)に必要な入力項目と画面遷移フロー。ここまで揃えばFlowSyncでの開発着手が翌週から可能。
重要なのは、この3点が同日中にすべて揃うことです。「ヒアリングして、後日資料を作って、次の会議で確認して…」という従来のIT導入プロセスに比べ、意思決定のスピードが格段に上がります。Anomalyのサポートを活用すれば、FS Blueprintの進行ファシリテーションから画面設計レビューまでをワンストップで受けることも可能です。
まとめ
- 課題の根本:受注・金型割付・採算管理の分断が樹脂成形メーカーのDX化を阻んでいる
- 棚卸しの起点:受注番号・金型番号・成形チャージなど7項目を軸に業務フロー一覧表を30分で作成することが最初のステップ
- 優先順位の決め方:頻度×影響度×属人化度の3軸スコアリングで「FlowSync第1弾アプリ」を数値根拠付きで特定できる
- ゴールの設定:半日ワーク1回で業務フロー一覧・移行対象一覧・FlowSync画面設計の叩き台の3点が揃い、翌週から開発着手が可能になる
- 定量効果:採算確認作業を月間15時間→1時間以下に削減したとされる事例も——まず「棚卸し」から始めることが最短経路