業務改善

製造業の仕掛品・中間在庫をFlowSyncでリアルタイム可視化する設計術

Anomaly編集部

「あの部品、今どこの工程にある?」——その問いに答えるため、製造現場の担当者が工場内を歩き回り、各工程のリーダーに電話をかけ、最終的にExcelの生産日報をひとつひとつ突き合わせる……そんな光景が、今日も中小製造業の現場で繰り返されています。


Before:なぜ「仕掛品の居場所」がわからなくなるのか

多品種少量生産を行う製造業では、同一ラインで異なる製品が並行して流れます。工程数が増えるほど、どの製品がどの工程に何個あるのかを把握するのが難しくなります。この「工程間在庫のブラックボックス化」には、構造的な4つの原因があります。

原因① 工程ごとにバラバラな記録方法

加工・組立・検査といった各工程が、それぞれ独自の紙帳票やExcelファイルで実績を記録しています。フォーマットも更新タイミングも統一されていないため、全体を横断的に把握できません。

原因② 実績入力のタイムラグ

紙の日報を夕方にまとめて入力する運用では、午前中に発生した滞留が夕方まで見えません。異常の発見が遅れ、対処できる時間が失われます。

原因③ 仕掛品に「現在地」の情報が紐づいていない

製番(製造番号)や品番はシステムで管理されていても、「今どの工程にあるか」という状態情報が常に最新化される仕組みがありません。ERPの工程管理機能がそもそも存在しないケースも多いです。

原因④ ボトルネック工程の特定が「感覚頼り」

ベテラン管理者が「あそこが詰まっているはずだ」という経験則で動いています。データに基づかないため、属人化が進み、担当者の異動・退職でノウハウが失われます。


FlowSyncで仕掛品追跡アプリを設計する基本構造

FlowSyncを使った仕掛品追跡アプリは、「1製造ロット=1レコード」の原則で設計します。工程が進むたびにレコードが上書き更新されるのではなく、工程通過ごとにログが積み上がる設計が、滞留時間の計算やトレーサビリティ(追跡可能性)の確保に有効です。

仕掛品レコードの基本フィールド構成

1
製造ロットID・品番・数量

QRコードやバーコードと紐づけるユニークな識別子です。スキャンするだけでレコードを呼び出し、入力画面に遷移できます。

2
現在工程ステータス(ドロップダウン選択)

「加工中」「工程間搬送待ち」「検査待ち」「完成品待機」など、現場で定義したステータスをドロップダウンボタンで選択。タップ1回で完結します。

3
工程着手タイムスタンプ・離脱タイムスタンプ

現場スタッフが「開始」「完了」ボタンを押すと自動で時刻が記録されます。この2つの差分が滞留時間として自動計算され、アラート判定に使われます。

設計のポイント:工程ログテーブルを親レコードとは別に持つ「1対多の構造」にすることで、過去の工程履歴をすべて保持したまま、ダッシュボードには「最新の工程状態」だけを表示できます。FlowSyncのリレーション機能で実装可能です。


After:工程別ダッシュボードで何が見えるか

アプリが稼働すると、管理者は1つの画面(工程別ダッシュボード)で工場全体の仕掛品の流れをリアルタイムに確認できます。

Before → Afterの比較

Before:朝礼前に各工程リーダーへ電話確認→情報収集だけで約40分、しかも数時間前のデータ
After:ダッシュボードを開くだけで30秒以内に全工程の仕掛品数・滞留状況を把握できるとされています

ダッシュボードには、以下の情報が一画面に集約されます。

工程別仕掛品数のヒートマップ表示

各工程の仕掛品数が棒グラフまたはカラムカードで表示され、数が多い工程ほど色が濃くなります。ボトルネック工程が視覚的に一目でわかります。

滞留アラートリスト

設定した閾値(例:同一工程に4時間以上滞留)を超えたロットが自動でリストアップされます。担当者のスマートフォンにプッシュ通知を送る実装も可能です。月30件以上の滞留見落としが、アラート運用後はほぼゼロになるとされています。

納期予測への連動

工程ごとの平均リードタイム(標準処理時間)と現在の仕掛状況を組み合わせ、「出荷予定日」を自動計算して表示します。出力ファイル名「納期予測レポート_YYYYMMDD.pdf」としてワンクリックでエクスポートでき、営業への共有が即時に行えます。


現場入力を定着させる設計のコツ

どれだけ優れたアプリを作っても、現場で入力されなければ意味がありません。入力定着のカギは「現場スタッフに余計な操作をさせない」設計に尽きます。

1
QRコード/バーコードスキャンで対象ロットを呼び出す

ロットに貼付したQRコードをタブレットのカメラでスキャンするだけで、対象レコードの入力画面に自動遷移します。品番や製番を手入力する手間がゼロになります。スキャンから入力完了まで平均15秒以内を目標に設計します。

2
「開始」「完了」の2ボタンUIに絞る

現場スタッフに求める操作は、工程開始時に「開始ボタン」を、完了時に「完了ボタン」を押すだけ。タイムスタンプ・担当者名・工程名はシステムが自動補完します。テキスト入力を求めるフィールドは原則ゼロにします。

3
工場内の各工程に専用タブレットを固定設置する

「どのタブレットを使うか」を考えさせないよう、各工程の作業台にタブレットスタンドで固定します。電源は常時接続。FlowSyncのアプリはブラウザで動作するため、端末を選ばず導入コストを最小化できます。

ある多品種少量生産の金属部品メーカーでは、この3つの設計を採用した結果、アプリ稼働後2週間で入力率が91%に到達したとされています。以前のExcel日報運用では入力率が60%を下回ることも多かったとされており、データの信頼性が根本的に改善しました。


まとめ

  • 課題の根本:工程間仕掛品のブラックボックス化は、記録手段の分散・タイムラグ・状態情報の欠如という構造問題が原因
  • 設計の核心:FlowSyncで「1ロット=1レコード+工程ログの1対多構造」を実装することで、滞留時間の自動計算・ボトルネック特定・納期予測がひとつのダッシュボードで完結する
  • 定着の要件:QRスキャン・2ボタンUI・工程固定タブレットで入力負荷をゼロに近づける設計が、現場への浸透を左右する最重要ポイント
  • 期待効果:朝の情報収集が40分→30秒、滞留見落としが月30件→ほぼゼロという定量的な改善が現実的な目標として設定できる
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