回路図と部品表を見比べながら、担当者が電卓とExcelで見積金額を積算する――。制御盤メーカーの見積業務は今も「経験と勘」に支えられている現場が少なくありません。その見積書が確定した後、部品発注と在庫管理はまた別のExcelで管理され、どこにも連携されていないという会社も多いのではないでしょうか。
見積・部品手配・在庫管理が分断される構造的な限界
制御盤は案件ごとに回路構成が異なり、使用する電気部品(ブレーカー、リレー、端子台、PLCなど)の種類も数百点に及びます。回路図PDFと部品表(BOM:Bill of Materials=部品構成表)を担当者が目視で突き合わせ、経験値をもとに工数と材料費を積算するため、同じ内容の盤でも担当者によって見積額にばらつきが出やすい構造です。
見積が確定した後、部品の所要量計算や在庫引当は別のExcelファイルや発注台帳で行われることが一般的です。見積時点の部品表と、実際に発注する部品表が別々に管理されるため、転記ミスや二重入力が発生しやすく、在庫切れや余剰在庫の把握も遅れがちになります。
担当者が異動したら、この積算ノウハウは誰が引き継ぐのか?
AIが回路図PDFと部品表を読み取り、見積から在庫引当までを連携する設計
制御盤業界では、配線工数や部品質量に応じて見積額を自動補正する仕組みを持つ見積システムが登場し始めています。しかし、見積と在庫・部品手配までを一体化した業務アプリの事例はまだ少なく、ここに改善の余地があります。
Before(手作業/Excel):営業担当が回路図PDFを開き、部品表を目視で転記しながら単価表Excelと照合して見積金額を手計算。見積確定後、別の発注担当がもう一度部品表を見ながら在庫数を目視確認し、発注Excelに手入力する。
After(業務アプリ):回路図PDFと部品表をアップロード画面にドラッグ&ドロップすると、AI-OCR(画像から文字情報を読み取る技術)が部品型番・数量を自動抽出。「見積算出」ボタンを押すと、単価マスタと配線工数テーブルを参照して見積金額が自動算出され、そのまま「部品所要量計算」画面に遷移。在庫マスタと照合して不足分が自動で抽出され、「発注リスト出力」ボタンから発注書PDFとCSVファイルが出力される。
見積から発注までが一本の画面遷移でつながることで、転記工程が1本減り、見積用部品表と発注用部品表の二重入力がなくなる点が最大の変化です。金額や納期の精度向上は、この工程統合の副産物として得られます。
汎用盤とカスタム盤を分けて優先度を自動判定する
制御盤には、標準部品中心で設計パターンが決まっている「汎用盤」と、特注部品や個別仕様が多い「カスタム盤」が混在します。この2つを同じロジックで見積・在庫連携すると、精度が下がったり、優先度判断を誤ったりするため、業務アプリ側での分岐設計が重要です。
部品表の型番が標準部品マスタに一致する割合が高い案件は「汎用盤」と自動分類し、在庫引当を優先実行。見積精度を高速に出せる設計にします。
マスタに存在しない型番が一定割合を超えた案件は「カスタム盤」と判定し、特注部品欄を別画面で表示。発注担当が個別にメーカー見積を取得するフローへ分岐させます。
分類結果に応じて「標準見積書」「個別見積書」のテンプレートを自動選択し、出力ファイル名も「案件番号_標準見積.pdf」「案件番号_個別見積.pdf」のように自動命名して管理工数を減らします。
1案件1部品表の試験導入から全案件への展開へ
こうした仕組みは、いきなり全案件・全型番に展開するのではなく、まず1案件・1部品表で試験導入することが現実的です。
過去に確定した見積案件の回路図PDFと部品表をアップロードし、AIの読み取り精度と見積算出結果を、人が積算した実績値と突き合わせて検証します。
部品所要量計算の結果が、実際の在庫台帳と一致するかを確認し、マスタの型番表記ゆれなどを洗い出して修正します。
精度が安定した汎用盤の型番から対象を広げ、最終的にカスタム盤を含む全案件へ展開します。段階導入によって現場の抵抗感を減らすことができます。
まとめ
- 制御盤メーカーの見積業務は、回路図PDFと部品表を人手で突き合わせる属人化した積算作業が構造的な課題である
- AIによる回路図・部品表の自動読み取りを起点に、見積算出から在庫引当・発注リスト出力までを連携させることで、転記工程の削減と二重入力の解消が実現できる
- 汎用盤とカスタム盤を自動判定で分けることで、見積精度と部品手配の優先度を最適化できる
- 導入は1案件1部品表の試験運用から始め、精度を確認しながら全案件・全型番へ段階的に展開するのが現実的な進め方である
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