「うちの取引先、いまだにFAXで注文書を送ってくるんですよ」——製造業の受注担当者から、こうした声を聞くことは今も珍しくありません。2026年になっても、FAXは受注の入口として現役です。
なぜ2026年になってもFAX注文書は無くならないのか
「うちだけ遅れているのでは」と感じる経営者は多いですが、実態は違います。中小企業の85.8%がFAXや電話などアナログな手段での受注を継続しているという調査結果もあり、これは業界全体に共通する構造的な問題です。
注文書のフォーマットは、多くの場合こちらではなく取引先側が決めています。長年の取引関係の中で定着した独自書式を、こちらの都合だけで変えてもらうのは現実的ではありません。
1回の注文数量が少なく、品目のバリエーションが多い受注は、EDI(企業間で電子データをやり取りする仕組み)を導入しても投資に見合う効果が出にくいと判断されがちです。結果として、双方が「電子化するほどの量ではない」と考え、FAXが残り続けます。
Before:FAX注文書が届いてから受注登録されるまで
実際の現場では、1枚のFAX注文書が受注データになるまでに、いくつもの手作業が挟まっています。
FAXで届いた注文書を担当者が目視で確認 → 型番・数量・納期をExcelや基幹システムに手入力 → 上長が紙とExcelを突き合わせて確認 → ようやく受注登録が完了。この一連の流れの中に、転記ミス・出荷遅延・特定担当者しか対応できない属人化のリスクが潜んでいます。
特に手書き文字や、かすれた複合機のFAX出力は読み間違いの温床です。数量の桁を見誤れば欠品や過剰在庫につながり、納期の見落としは信用問題に直結します。
「取引先にFAXをやめてもらう」は交渉コストが高すぎる
EDIの普及率が依然として低い背景には、こうした力関係の問題があります。発注側にとってFAXは「今のやり方を変えなくていい」手段であり、受注側から変更を求めることは取引関係そのものにリスクを及ぼしかねません。中小製造業の営業利益率は3〜5%程度とされる中、取引を失うリスクを冒してまで交渉に時間とコストをかけるのは合理的とは言えないという判断も理解できます。
発想の転換:取引構造は変えず、自社の受け口だけを自動化する
ここで有効なのが、「取引先を変える」のではなく「自社が受け取った後の処理を変える」という発想です。FAXという入口はそのままに、届いた注文書をAI-OCR(画像から文字情報を読み取り、データ化する技術)で読み取り、型番・数量・納期といった項目を自動抽出して基幹システムに連携する仕組みです。
複合機やクラウドFAXで受信したFAXを画像データとして取り込みます。紙をスキャンする手間も不要です。
型番・数量・納期・取引先名といった項目を自動で読み取り、データ化します。
抽出したデータを受注登録画面に反映し、CSV出力などを介して基幹システムに連携します。
こうした受け口の自動化を専門に扱うサービスとして、紙・FAX・PDFなど非構造データの読み取りと業務システム連携を担うFAX・紙帳票をAI-OCRでデータ化する仕組みDocSyncの紹介ページが、自社が提供するサービスとして紹介されています。取引先との交渉を必要とせず、自社側の工程だけで完結する点が特徴です。
After:受注登録画面でオペレーターが確認・確定するだけになった業務フロー
この仕組みを導入すると、業務の姿は次のように変わります。
FAX受信一覧画面に届いた注文書が自動で並び、AIが読み取った型番・数量・納期がすでに入力された状態で「受注確認画面」に表示される。オペレーターは元のFAX画像と読み取り結果を見比べ、問題がなければ「確定」ボタンを押すだけ。読み取りに疑わしい箇所があれば「差し戻し」ボタンで手入力に切り替える——これだけで受注登録が完了します。
これまで「FAXを見て、Excelに転記し、上長が突き合わせる」という複数の工程を経ていた業務が、転記工程が1本減り、確認と確定という2つの動作に集約されます。二重入力もなくなるため、担当者による読み取りのブレも起きにくくなります。
自社の受注フローに合わせた読み取り精度・確認フロー設計のポイント
取引先ごとに注文書の書式が異なるため、AIに各フォーマットのパターンを学習させることで読み取り精度が安定します。
AIが読み取りに自信を持てない項目には目印を付け、オペレーターが優先的に目視確認できるようにする設計が現場負担を減らします。
読み取り後のFAX画像データをそのまま保存する運用にしておけば、電子帳簿保存法への対応も同時に進められます。
まとめ
- FAX受注が消えないのは取引先との関係や業界構造によるものであり、自社の努力だけでは解消しにくい問題である
- 取引先に電子化を求めるのではなく、自社側の受け口をAI-OCRで自動化することで、転記ミスや属人化のリスクを減らせる
- 受注登録画面での「確認・確定」という動作に業務を集約することが、段階的な投資として現実的な選択肢になる