「見積はAのExcel、工程指示は現場のホワイトボード、採算確認はまた別のExcel」——そんな3分散構造で日々の仕事が回っている切削加工・機械加工メーカーで、「FlowSyncに移行したいが何から手をつければいいか分からない」というご相談が急増しています。
なぜ「棚卸し」が先なのか
工具費・材料費の高騰が続く中、採算管理の精度を上げることは中小メーカーにとって急務です。しかしいきなりシステム設計に入ると、「実際の業務フローと画面が合わない」「使われない機能が量産される」という典型的な失敗に陥ります。
FlowSyncへの移行を成功させるために最初にやるべきことは、「現在どの業務が、どのツールで、誰の手で動いているか」を1枚のシートに可視化する棚卸しです。FS Blueprintはこの棚卸しを半日で完結させるためのワークフレームです。
切削加工メーカーに典型的な3分散構造——1見積Excel 2工程指示(ホワイトボード・紙) 3採算管理Excel——は、一見それぞれが独立して動いているように見えますが、実際には「見積の加工チャージが工程側に伝わらない」「外注費が採算Excelに手入力されるまでタイムラグが生じる」という連携断絶が慢性化しているとされています。棚卸しをせずに移行先を決めると、この断絶をそのままシステムに持ち込む危険があります。
FS Blueprint 半日ワーク:業務フローを1枚に書き出す手順
FS Blueprintワークでは、以下の7ステップを左から右に時系列で並べた「業務フローシート」を作成します。午前中2〜3時間で完成させることを目標にしてください。
品番・材質・数量・加工内容・希望納期を入力する起点業務。現状は担当者が個別Excelに記入。入力項目:品番、材質コード、員数、希望納期、見積担当者名を書き出します。
受注確定後に社内品番を発行し、旋盤・マシニング・研削など工程コードを割り当てるステップ。現状は口頭または紙の「作業指示書」で伝達されているケースが多い。
各工程への加工指示と、工具・材料の発注・引き当て。ここで工具費・材料費の実績値が発生するが、採算Excelへの転記は週次・月次になっている場合がほとんど。
熱処理・表面処理などの外注工程、最終検査、そして採算確認まで。見積時の想定原価と実績原価の差額が「採算差異レポート.xlsx」などに手入力されているケースが典型。
業務名:外注依頼 / 担当者:購買担当(1名)/ 使用ツール:メール+電話 / 発生頻度:月40件 / 現状の課題:外注先への仕様伝達ミスが発生するケースがある、採算Excelへの費用反映が翌月になる
優先順位スコアリング:「頻度×影響度×属人化度」で移行順を決める
業務フローシートが完成したら、午後の前半(1〜1.5時間)を使って各業務を3軸でスコアリングします。
頻度スコア(1〜3):月10件未満=1、月10〜50件=2、月50件超=3
影響度スコア(1〜3):遅延・ミスが金額に直結しない=1、採算や納期に影響する=2、受注損失・赤字案件に直結する=3
属人化スコア(1〜3):誰でもできる=1、特定の担当者でないと回らない=2、担当者不在で業務停止リスクあり=3
3軸の合計スコアが7以上の業務をFlowSync第1フェーズの移行対象と判定します。切削加工メーカーでの典型的なスコアリング結果では、「見積登録(合計8点)」と「採算管理(合計8点)」が最上位に来るケースが多く、工程指示は属人化スコアが高いものの頻度が中程度に留まり第2フェーズとなることが多いです。
Before → After:採算管理業務の変化
加工完了後、各担当者が工具費・材料費・外注費を個別に集計し「採算管理.xlsx」に転記。1案件あたりの集計作業に平均45分かかり、月40件で30時間/月を消費するとされています。さらに入力ミスや転記漏れで採算差異の把握が翌月にずれ込み、赤字案件の発見が1〜2ヶ月遅れるケースも。
受注番号をキーに、工程コード・材料費・工具費・段取り費・外注費がリアルタイムで紐付けられ、採算サマリー画面を開くだけで案件ごとの実績原価と見積原価の差額が即表示。集計作業は45分→約3分に短縮できるとされています。月40件で削減される工数は28時間/月。赤字案件の発見も完了当日に可能になります。
移行対象確定後のネクストアクション:設計に渡すデータ項目の整理
スコアリングで移行対象が確定したら、午後の後半(1時間)でFlowSync設計チームに渡す「データ項目一覧」を整理します。以下の項目を業務ごとに書き出してください。
受注番号、品番、材質コード、員数、納期、受注金額。これらは見積Excelの列名と現場での呼び名が異なることが多いため、「Excelでの列名」と「現場用語」を併記することが重要です。
工程コード、加工チャージ(円/時)、材料費(実績)、工具費(実績)、段取り費、外注先コード、外注費(実績)。採算管理に必要な見積値と実績値の両方を項目として定義します。
採算(実績原価合計)、採算差異(見積原価との差)、採算率(%)。FlowSync上の「採算確認ボタン」を押すと「案件別採算レポート」が出力される設計にするため、この3項目の定義を最初に固めます。
FS Blueprintワーク終了時の成果物は2点:①業務フローシート(現状の7ステップと課題)と②スコアリングシート(移行優先順位一覧)です。この2点があれば、FlowSync設計の初回打ち合わせを具体的な画面設計の議論からスタートできます。
まとめ
- 切削加工・機械加工メーカーの3分散構造(見積Excel・工程紙管理・採算Excel)は、棚卸しなしの移行で断絶をそのまま持ち込む危険がある
- FS Blueprintの半日ワークで「業務フローシート」と「スコアリングシート」を作成し、FlowSync第1フェーズの移行対象を当日中に特定できる
- 採算管理の集計は45分→3分に短縮可能とされています。工具費・材料費高騰の環境下で赤字案件を当日発見できる体制が実現する
- 移行対象確定後は「受注番号・品番・工程コード・加工チャージ・材料費・工具費・段取り費・外注先・採算」のデータ項目一覧を整理してFlowSync設計チームに渡すことで、設計フェーズを即日開始できる