受注の問い合わせはFAXと電話、金型の状態はベテランの頭の中、採算は月末にExcelをつなぎ合わせて集計——プレス・板金加工業の現場では、こうした「紙とExcelの分断状態」が当たり前になっていませんか?「デジタル化が必要なのはわかっているが、何から手をつければいいかわからない」という声が、中小製造業のDX支援の現場で最も多く聞かれます。
なぜ今か|プレス・板金加工業が「何からデジタル化するか」を決められない理由
プレス・板金加工業は、他の加工業種と比べて管理項目が特に多い業種です。受注ごとに金型の割付・償却管理が発生し、外注工程や表面処理の手配が絡み、さらに採算は素材ロスや金型修繕費まで含めてはじめて正確な数字になります。
① 受注情報:FAX・電話・メールで受けた内容を担当者がExcelや紙の台帳に手入力。顧客ごとにフォーマットが違うため転記ミスが頻発する。
② 金型情報:どの金型がどの案件に割り付けられているか、償却残高はいくらかを把握しているのは一部のベテランのみ。金型棚卸は年1回、手作業で確認。
③ 採算情報:月末に材料費・外注費・工数をExcelで集計するが、金型修繕費の按分ルールが属人的で、担当者が変わると数字が変わる。
この3つがそれぞれ別のツールで管理されているため、「受注→金型割付→工程指示→採算確定」という一連の流れを誰も全体像として把握できていません。中小製造業のDXでは「何から始めるか」「優先順位の決め方」が大きな障壁とされており、まずここを解決する必要があります。
ステップ1|FS Blueprintで業務フローを一覧化する
FS Blueprintは、FlowSyncが提供する業務棚卸ワークシートです。「登場人物・帳票・判断ポイント」を付箋感覚で書き出すことで、現状の業務フローを半日で可視化できます。プレス・板金加工版では、以下の5フェーズを対象に棚卸しを行います。
登場人物:営業担当・受付担当。帳票:受注台帳(Excel)・FAX原票・見積書PDF。ここでは「顧客コード」「品番」「数量」「納期」「金型番号」が必須入力項目になる。
登場人物:製造リーダー・金型担当。帳票:金型マスタ(紙台帳)・金型使用履歴シート。「金型番号」「使用可能ショット数」「現在ショット数」「修繕履歴」を確認・更新する作業が発生する。
登場人物:製造担当・品質担当。帳票:工程指示書(紙)・検査記録票。プレス条件(トン数・ストローク数)・材料ロット番号の記録が必要。
登場人物:調達担当。帳票:外注依頼書・納品確認書。表面処理・溶接などの外注先ごとに単価・リードタイムが異なり、採算への影響が大きい。
登場人物:管理担当・経営者。帳票:採算シート(Excel)・月次原価報告書。材料費・外注費・金型償却費・工数を案件別に集計し、粗利率を算出する。
FS Blueprintの棚卸しワークでは、各フェーズの「入力項目」「担当者(役割名)」「使用帳票名」「判断基準(誰がどのタイミングで何を見て決めるか)」を付箋に書いて壁面に貼り出します。全体像をA1サイズ1枚に収めることで、分断ポイントと重複作業が一目で見えるようになります。
ステップ2|スコアリングで優先順位を決める
業務フローを可視化したら、次は「どこからデジタル化するか」を客観的な基準で絞り込みます。FS Blueprintでは3軸スコアリングを使います。
① 頻度スコア:その業務が週に何回発生するか。受注登録は毎日=5点、月次採算集計は月1回=1点。
② 属人化スコア:その業務を「この人しかできない」状態か。金型割付の判断がベテラン1名に依存=5点、手順書のある工程指示=2点。
③ 採算インパクトスコア:その業務のミスや遅延が利益に直結するか。外注費の集計漏れは粗利を直撃=5点、社内伝票の転記ミス=2点。
スコアリングの結果は「デジタル化優先度マップ」として出力し、経営者・製造リーダー・管理担当の3者で30分の合意形成ミーティングを行います。全員が同じ根拠で優先順位を確認することが、後の社内推進をスムーズにする最大のポイントです。
ステップ3|FlowSync移行ロードマップを半日ワークで設計する
優先順位が決まったら、いよいよFlowSyncへの移行設計に入ります。FS Blueprintの後半ワーク(午後の3時間)では、以下の3つのアプリモジュールを設計します。
① 金型マスタアプリの設計
入力項目:金型番号・品名・対応プレス機・累計ショット数・メンテナンス期限・償却開始日・残償却額。ボタン:「ショット数更新」「修繕記録追加」「使用中フラグ切替」。出力ファイル:金型台帳PDF・メンテナンス期限アラートリスト。
Before:ベテラン担当者がA4紙の金型台帳を見ながら手書きで更新 → After:プレス機横のタブレットから「ショット数更新」ボタンを押すだけで累計が自動加算、メンテナンス期限の3日前に自動アラート通知が届く。更新作業は1件あたり大幅に短縮されるとされています。
② 受注台帳アプリの設計
入力項目:受注番号(自動採番)・顧客コード・品番・数量・納期・使用金型番号・外注フラグ。金型マスタと連携し、使用金型番号を入力すると残ショット数と使用可否が自動表示される。出力ファイル:工程指示書PDF・外注依頼書PDFが「出力」ボタン1つで生成される。
Before:受注台帳・金型台帳・工程指示書を別々のExcelファイルで管理し、転記に30分/件かかっていた → After:受注登録画面から一括出力で5分/件に短縮されるとされており、月60件の受注なら月25時間の削減が見込めるとされています。
③ 採算シートアプリの設計
受注台帳から材料費・外注費を自動連携し、工数入力画面(作業者が完了時に「作業時間」を入力するだけ)から人件費を自動計算。金型マスタの償却データを引っ張り、案件別の採算シート(粗利・粗利率・金型償却込み利益)が自動生成される。月次の採算集計が丸1日→2時間に短縮されるとされています。
FS Blueprintの半日ワークが終わると、「何のアプリを・どの入力項目で・誰が使うか」を記載した移行ロードマップが完成します。これをそのままFlowSyncの内製開発仕様書として使えるため、開発着手までのリードタイムを大幅に短縮できます。
まとめ
- プレス・板金加工業は受注・金型・採算が分断されており、「何からデジタル化するか」の決め方そのものが最初の課題
- FS Blueprintの業務棚卸ワークで5フェーズの登場人物・帳票・入力項目を可視化し、全体の分断ポイントをA1一枚に整理できる
- 頻度・属人化度・採算インパクトの3軸スコアリングで優先順位を数値化し、感覚論による社内対立を防ぐ
- 半日ワークの後半で金型マスタ・受注台帳・採算シートの3アプリ設計まで完了し、FlowSync内製化の仕様書を即日作成できる
- 月60件規模の受注であれば、内製化後に月25時間以上の転記工数削減と月次採算集計の大幅な時間短縮が見込めるとされています