「このExcelマクロ、作った担当者はもう退職しています」——見積計算や在庫管理の心臓部を、たった一人が組んだAccessアプリやVBAマクロが支えている。そんな中小企業の情報システム部門は少なくありません。2026年、その綱渡りがいよいよ表面化します。
2026年10月、Accessと共に消えるもの
MicrosoftはAccess 2021のサポートを2026年10月13日に終了すると発表しています。セキュリティ更新プログラムの提供が止まり、Windowsの新しいバージョンでの動作保証も切れていきます。
同時期以降、MicrosoftのロードマップではVBScript(Windowsに組み込まれた簡易プログラミング言語)のコンポーネントも段階的に廃止される計画が示されています。VB6やExcelマクロで組んだバッチ処理・自動化ツールも無関係ではありません。
経済産業省の「DXレポート」が警鐘を鳴らした「2025年の崖」——老朽化した基幹システムがブラックボックス化し、対応できる人材もいなくなるリスク——が、今まさに個別ツールのレベルで具体化しているのです。
Before:属人化ツールが業務の心臓部にある現場
典型的なのは、次のような状態です。
舶用バルブメーカーの営業部門では、Access製の見積計算アプリが今も現役です。「見積番号」入力欄に番号を打ち込み、「計算実行」ボタンを押すと、部材コストと加工係数を掛け合わせた見積金額が自動算出される——という10年以上前に組まれたロジックが、今も会社の売上を支えています。
しかし作った担当者はすでに退職。VBAのコードを読める社員は社内に一人もいません。「壊れたら詰む」という不安を抱えながら、誰も触れずに使い続けているのが実情です。
建築設備会社の在庫管理でも同様のケースが見られます。Excelマクロで在庫数を自動集計し、発注点を下回ると色付きセルで警告する仕組みが組まれているものの、マクロの中身は「触ると壊れそうで怖い」というブラックボックス状態。紙の棚卸し表と突き合わせながら、最終的には手作業で在庫数を再確認する二重管理が常態化しています。
After:AIが既存ロジックを解析し、同じ動きのWebアプリに再現する
ここで重要なのは、基幹システムを刷新するのではなく、個別ツールをそのままWebアプリとして再現するという発想です。既存のAccessアプリやExcelマクロを解析し、入力画面のレイアウト・計算式・出力形式を読み解いた上で、同じ動きをするWebアプリとして組み直します。
「見積番号」「顧客名」「数量」といった入力項目、ボタン配置、画面遷移の順序をそのまま棚卸しします。現場の操作感を変えないことが移行の前提です。
部材コスト×加工係数といった計算式、条件分岐、参照しているマスタ表の構造をAIが解析し、同等のロジックとしてWebアプリ側に再実装します。
「見積書_20250101.pdf」のようなファイル名規則や出力レイアウトも維持し、経理・取引先とのやり取りに影響が出ないようにします。
この設計により、検索画面→詳細画面→承認画面という既存の画面遷移はそのままに、裏側の実行環境だけをブラウザベースへ置き換えることができます。転記工程やExcelとの二重入力が発生していた部分は、この移行の過程で1本にまとめられます。
基幹システムは動かさない、段階移行というロードマップ
基幹システムの総入れ替えは投資額もリスクも大きく、経営判断として二の足を踏む中小企業が多いのが実情です。しかし個別ツール単位であれば、業務影響範囲を限定した状態で検証・移行できます。まずはサポート終了の影響が大きい見積計算・在庫管理・勤怠集計など、属人化リスクの高いツールから着手するのが現実的なロードマップです。
Access 2021のサポート終了日である2026年10月13日は、単なる「更新プログラムが止まる日」ではありません。作った人しか触れないツールが、誰にも触れないツールへと変わる日でもあります。移行の検討は前倒しで進める価値があります。
まとめ
- 要点1:Access 2021は2026年10月13日にサポート終了し、VBScriptも段階的に廃止予定。VBAで組まれた属人化ツールは待ったなしのリスクを抱えている
- 要点2:基幹システムを丸ごと刷新せず、入力画面・計算ロジック・出力形式を解析してWebアプリとして再現する設計により、現場の操作感を変えずに移行できる
- 要点3:見積計算・在庫管理など1業務ずつ段階的にWebアプリ化するロードマップが、投資リスクを抑えた現実的な選択肢になる
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