製造業DX読了 約4

製造業のデータ基盤構築、相談前に知るべき統合順序

AAnomaly編集部
目次

データ分断を解消する統合順序:マスタから着手する理由

生産管理部門は「品番A-102」、営業部門は「製品コードSA102」、経理部門は「原価管理No.0102」——同じ部品を指しているはずなのに、部署ごとに呼び方が違う。そんな状態のまま、生産管理・原価・見積が別々のExcelファイルで動いていないでしょうか。

製造業の現場でよく見られるこの「データ分断」は、部署間の連携を阻み、月末の数字合わせに何時間も費やす原因になっています。本記事では、製造業のデータ基盤構築において、なぜ「マスタ統合」から着手すべきなのかを、具体的な手順とともに解説します。


機能から着手すると失敗する理由

データ活用と聞くと、多くの経営者やIT担当者はまず「ダッシュボードを作りたい」「見積作成を自動化したい」といった機能面から発想しがちです。しかし、これは典型的な失敗パターンです。

原因:土台となるマスタが揃っていない

品番・取引先・工程といった基礎データ(マスタ)が部署ごとにバラバラのまま自動化ツールやダッシュボードを導入すると、集計するたびに数字が食い違います。

NECの資料でも、BOM(部品構成情報)やBOP(製造プロセス情報)はPLMで管理され、PLM・SCM・MESをまたぐ共通マスタデータとして重要視されているとされており、これが不統一だと後続のデータレイクやDWH(データウェアハウス)といった分析基盤そのものが機能しないと指摘されています。

製造業DXでは、いきなり全社統合データ基盤を構築するのではなく、まず現場主導でExcelや紙台帳による属人管理から脱却し、受注・生産・在庫のデータをマスタレベルで揃えることが土台作りとして推奨されています。


マスタ統合の着手順:品番→取引先→工程

では、実際にどの順序でマスタを統合すればよいのでしょうか。闇雲に手をつけるのではなく、以下の順序で統一コードを設計することが現実的です。

1
品番マスタの統一

まずは製品・部品を識別する「品番コード」を一本化します。部署ごとの呼び名を洗い出し、どのコードを正とするかを決め、旧コードとの対応表(変換マスタ)を作成します。ここが揺らぐと、後続の工程がすべて崩れます。

2
取引先マスタの統一

次に、顧客コード・仕入先コードを統一します。同じ取引先が営業部門と購買部門で別コードになっているケースは非常に多く、見積書と発注書を突き合わせる際のズレの原因になります。

3
工程マスタの統一

最後に、生産工程(切断・加工・組立・検査など)の呼称と工程コードを統一します。これにより、原価計算と生産管理表が同じ単位で紐づくようになります。

この順序を守る理由は明快です。品番が定まらなければ取引先マスタとの紐付け(どの取引先にどの品番を納品しているか)が定義できず、工程マスタも品番なしには意味を持たないからです。


Before/After:統合前と統合後で何が変わるか

Before(統合前):営業担当が見積書をExcelで作成し、品番は「SA102」と入力。生産管理部門は生産管理表に「A-102」と入力。原価計算担当は原価管理シートに「0102」と入力。月末になると、どの数字がどの製品を指すのか、担当者に確認する電話が飛び交います。

After(統合後):業務アプリの「品番検索」画面で「A-102」と入力すると、統一マスタに登録された正式名称・取引先情報・工程情報が自動表示されます。見積書作成画面で品番を選択すれば、BOM(部品表)と生産管理表に同じコードで自動的に紐づき、「見積確定」ボタンを押すだけで生産管理表への転記が不要になります。出力される「生産指示書.csv」もマスタと連動しているため、二重入力が発生しません。

この品番、営業と製造で本当に同じものを指しているか?
この取引先コード、経理と購買で照合できるか?

スモールスタートの進め方

「全品番・全取引先を一気に統一する」と考えると、途方もない作業に感じられ、結局手がつけられないまま終わってしまいます。現実的なのは、範囲を絞ったスモールスタートです。

現実的な着手範囲の目安

まずは出荷頻度・売上構成比の高い主要な品番・取引先に絞って統一コードを決めます。一般にパレートの法則に基づき、上位2割程度の品番・取引先が全体の8割を占めるとされており、その範囲から着手すれば、効果を早期に実感しながら、残りの品番・取引先へと段階的に拡張できます。

この進め方であれば、生産管理・原価・見積といった各業務システムに手を入れる前に、まず「共通言語」としてのマスタを整備することができます。マスタが整った状態であれば、後から業務アプリ間の自動連携を追加することも容易になります。

なお、Excelでの管理そのものが限界を迎えているサインや、業務アプリへ移行すべきタイミングの見極め方については、Excel管理の限界と業務アプリ移行の判断基準を解説した記事で詳しく取り上げていますので、あわせてご参照ください。


まとめ

  • データ基盤構築は機能(ダッシュボード・自動化)からではなく、マスタ統合から着手するべき
  • 統合順序は品番マスタ→取引先マスタ→工程マスタが現実的で、この順を守ることで後続工程の手戻りを防げる
  • いきなり全件統一を目指さず、主要品番100点・主要取引先30社などスモールスタートで進めることが成功の鍵

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