製造業のDXコンサルティング依頼、「設計だけ」を切り出すという選択肢
見積もりはExcel、受発注は紙とFAX、在庫は担当者の頭の中——そんな状態を変えたくてDXコンサルティングの資料を集めたものの、「戦略立案から実装まで一式でお願いします」という提案書の金額を見て手が止まった。そんな経営者・IT担当者は少なくありません。
DXコンサルに「全部お任せ」すると起きるミスマッチ
製造業のDX推進を外部に相談する際、多くの支援会社は「初期診断→戦略立案→実装支援→運用支援」という一連の流れを一括提案してきます。しかし、複数の専門メディアが公開している費用相場を見ると、フェーズごとの金額差は決して小さくありません。
初期診断・アセスメント:50〜200万円程度
戦略立案:200〜500万円程度
実装支援(開発込み):300〜1,000万円程度
運用支援:月額30〜100万円程度
この内訳を知らずに一括発注すると、「戦略立案フェーズで方向性は固まったが、自社の業務に合わない開発仕様のままシステム化が進んでしまった」「運用支援の月額費用が想定より重く、途中で契約を見直した」といったミスマッチが起こりがちです。特に中小製造業では、全工程を一社に任せる前に、どこまでを外部に依頼し、どこから自社で担うかを一度立ち止まって切り分けることが重要になります。
依頼範囲を分解する発想:4つの工程に切り分ける
DXコンサルティングの依頼範囲は、大きく4つの工程に分解できます。この切り分けを意識するだけで、見積もりの妥当性を判断しやすくなります。
どの業務領域からDXに着手するか、投資の優先順位をどう置くかを整理する上流工程です。経営層の合意形成が中心になります。
現場の業務フローを棚卸しし、入力項目やデータ項目、画面遷移をどう設計するかを固める工程です。ここが甘いと、後工程の開発がすべて手戻りになります。
要件定義書・仕様書をもとに、実際に業務アプリを構築する工程です。内製、外注のどちらでも進められます。
稼働後の問い合わせ対応、追加要望の反映、定着支援を継続的に行う工程です。
「DXコンサルタント」と「DX支援会社(開発込み)」では業務範囲が異なる点にも注意が必要です。コンサルティングのみを依頼する場合、開発・導入は自社または別会社が担う前提になっている場合があります。契約前に、どの工程までが契約範囲かを明確にしておく必要があります。
「設計だけ依頼する」という選択肢のメリット
4つの工程のうち、特に外部の専門知見が効くのが2の業務設計・要件定義フェーズです。ここだけを切り出して依頼し、仕様書・業務フロー図・データ項目定義書を先に固めてから、開発を別途発注するという進め方があります。
現場の入力項目やボタン名まで詰めずに、見積もりだけ取っていないか?
設計フェーズで固めるべき成果物を具体的に見てみましょう。例えば建築設備会社の受発注業務をシステム化する場合、以下のような要素を設計書に落とし込みます。
受注内容をFAXで受け取り、担当者がExcelの受注一覧に手入力。品番・数量・納期を別シートの発注控えに転記し、発注書はWordで都度作成してメール添付で送付している。
「受注一覧」画面で新規受注を登録すると、品番・発注数量・納期の入力項目が自動でチェックされ、必須項目が空欄のままだと「登録」ボタンが押せない仕様になる。「受注詳細」画面から「発注確定」ボタンを押すと、あらかじめ定義したデータ項目に沿って「発注書_20240401.csv」が自動出力され、転記工程が1本減る。
このAfter側の画面構成・ボタン名・出力ファイル名は、すべて設計フェーズで事前に定義しておく内容です。仕様が先に固まっていれば、開発会社を選ぶ際の相見積もりも取りやすくなり、開発フェーズでの認識齟齬による手戻りを防ぎやすくなります。
設計だけ依頼した後の体制づくりと、確認しておきたいこと
設計フェーズを外部に依頼し、開発を内製または別会社に発注する体制を取る場合、あらかじめ整理しておきたい確認事項があります。
業務フロー図・データ項目定義書・画面遷移図が、発注予定の開発会社にとって過不足なく使える粒度になっているかを確認します。
設計に不備があった場合の修正対応が、設計会社・開発会社どちらの範囲になるかを契約段階で明確にしておきます。
将来的な機能追加やデータ連携を想定した項目設計になっているかどうかも、設計会社に確認しておきたいポイントです。
こうした「設計だけを外部に依頼し、開発以降を自社主導で進める」進め方に対応した支援メニューとして、業務要件を整理して仕様書に落とし込む設計支援サービスがあります。戦略立案から実装まで一式で契約する前に、まずは自社の業務フローとデータ項目を整理する工程だけを切り出せないか、検討してみる価値があります。
まとめ
- DXコンサルティングの依頼は戦略立案・業務設計・開発・運用の4工程に分解して考えられる
- 「設計だけ依頼する」ことで、仕様書・業務フロー・データ項目定義を固めてから開発を発注でき、手戻りのリスクを減らせる
- 依頼範囲を切り分ける際は、成果物の形式・責任分界点・将来の拡張性を事前に確認しておくことが望ましい