機械・装置の技術・設計では、全部品を網羅していなかった表の再構築が進んでいる
減速機やアクチュエータをつくる機械・装置メーカーの技術・設計では、部品表の再構築が進んでいます。従来の部品表は全部品を網羅していませんでした。技術部門への依頼は、製造と購買の作業が一段落した時点で発生し、定時後に寄りやすくなります。
部品表を作り直しながら、過去の設計を探している
減速機やアクチュエータをつくる機械・装置メーカーの技術・設計の職能では、部品表の再構築が進んでいます。 作り直しているということは、それまでのものに足りないところがあったということです。実際、従来の部品表は全部品を網羅していませんでした。
端末の話は単純です。担当者に割り当てられているのは、個人専用のPCです。特別な端末ではありません。
いつやっているか。技術職能への依頼は、製造職能と購買職能の作業が一段落した時点で発生します。 順番が最後に来る職能です。そして 技術部門への依頼は、定時後に寄りやすいという形になります。作り直しの作業は、その後ろに積まれます。
同じ「探す」の話は、部品表の外側でも起きています。機構部品・装置部品をつくる会社では、図面管理のシステムを運用していますが、図面の類似の検索ができません。 図面は保管されています。呼び出すこともできます。ただし「これに似たものを出して」という引き方ができない、ということです。
その結果として何が起きているか。同じ会社で、類似品の抽出ができないことが技術の職能の負荷になっています。 負荷の大きさとして 「技術部門3名分の負荷」 という水準が語られています。これは顧客企業が自ら申告した負荷であり、当社が測った削減量でも、業種の平均でもありません。
この記事では、この職能が扱う帳票の一覧と、締めや繁忙期の話は書きません。当社が直接確認できている事実が無いためです。 端末についても「個人専用のPC」までしか書けません。設計用の端末が別にあるかどうかは確認できていません。
あわせて、本記事が確認できているのは、減速機・アクチュエータをつくる会社と、機構部品・装置部品をつくる会社の運用です。 同じ機械・装置でも、つくるものが違えば図面の枚数も部品表の深さも変わります。ここに書いたことが自社に当てはまるかどうかは、当てはめてみないと分かりません。
「探せない」は、4つの層が重なった結果として残っている
過去の設計を探せない理由を「整理が下手だから」と説明することはできません。図面は管理されています。部品表もあります。問題は保管の状態ではなく、保管したものを引くための軸が、どの層にも用意されていないことです。
構造として見ると、切れ目は4層に分かれます。
部品表と図面は別のものです。片方は構成を持ち、片方は形を持ちます。設計者が実際に探しているのは「似た設計」であって、そのどちらでもありません。探し物と、保管されている単位が、最初から一致していません。
ここが、この職能に固有の層です。従来の部品表は全部品を網羅していませんでした。 網羅していない表からは、そもそも引けない部品が出てきます。図面の側も、類似の検索ができません。 型番やファイル名では引けても、形状や構成では引けない、ということです。第1層が「どこを探すか」の問題であるのに対し、第2層は「何をキーに探すか」の問題です。
ここには直接確認できている事実があります。既存の基幹システムへのAPI接続の追加は、基幹ベンダーの見積額により実現せず、CSV連携やRPAでの代替が検討される——これは製造業と商社・卸にまたがって、複数社で共通して観測されている事象です。つまり「図面管理と基幹をつなげばよい」という結論の多くは、技術ではなく見積額のところで止まっています。
「では新しい仕組みを入れよう」という話は、たいてい一度は通っています。そして次のようになっています。
- 導入済みのパッケージが、機能過多で費用も過大であり現場に合わないと評価されている
- 情報システムの責任者が、パッケージは機能過不足になりがちであり、必要な機能に絞って自作した方がよいのではないかと述べる
4層を並べると、探せない理由が「几帳面さ」ではないことが分かります。探し物の単位・検索の軸・接続の費用・定着の失敗という、別々の層の問題が重なった結果として残っています。層が違うので、どれか1つを叩いても消えません。
とくに第2層は見落とされます。第1層(保管場所が2つある)だけを潰して1箇所に集めても、「似ている」で引けないことは変わりません。
この職能と業種に掛かっている制約
第1節で挙げたものは、技術・設計の職能が好きで選んだ形ではありません。業種と既存システムの側から決まっています。ここは事実だけを並べます。
- 部品表の再構築が進行しており、従来の部品表は全部品を網羅していなかった(減速機・アクチュエータをつくる会社)。
- 図面管理のシステムを運用しているが、図面の類似の検索ができない(機構部品・装置部品をつくる会社)。
- chemSHERPA(含有化学物質の情報伝達スキーム)の変更の検知が、業務の課題として存在する(同)。
3つ目は、前の2つとは性質が違います。部品表と図面は社内の都合で作り直せますが、含有化学物質の情報伝達のスキームは、外から変わります。 変わったことに気づく作業が、社内のどこかに要る、ということです。そして気づいた後に確認する対象は、結局この職能が持っている部品表と図面です。 第2層(似ているで引けない)は、ここで外からの締切と結びつきます。
ここに、既存システムの側から掛かる制約が重なります。これは機械・装置に限った話ではなく、製造業と商社・卸にまたがって、複数社で共通して観測されているものです。
既存の基幹システムには仕様上の制約があり、新しい仕組みをその制約に合わせられるかが問われます。 例えば、添付ファイルの容量に上限があるという制約が挙げられた例があります。
図面を扱う職能にとって、この制約は直接効きます。探す対象そのものが、受け渡しの経路で切られうるということです。
打ち手は3つに分かれる
以下は当社の記録にある事実ではなく、上の構造から取れる選択肢の整理です。それぞれ向く条件が違います。
向くのは、探す回数が少なく、定時後に寄る依頼の枠に収まっており、外からの締切(規制・スキームの変更)に間に合っている場合です。この場合、仕組みを入れる費用と、定着させる手間のほうが大きくなります。第2節の第4層で見たとおり、入れて使われなくなるという結末は実在します。 何もしないことは、消極的な選択ではなく、条件によっては正しい選択です。
向くのは、探す回数が増えていて、かつ間違いを人が拾える工程が残せる場合です。ここには直接確認できている事実があります。顧客の側から、精度が100点でないことを前提としてよいとし、候補を提示して人が確認する運用でよい、と表明された例があります。 つまり「全自動でなければ意味がない」という前提は、必ずしも発注側の前提ではありません。
この職能では、(b) は第2層と相性が良いという特徴があります。「似ている」の最終判断は、もともと設計者がしています。機械が候補を並べ、人が1つ選ぶという形は、いまの仕事の順番を変えません。選ぶ主体は人のまま、候補を集める作業だけを渡すという切り方ができます。
向くのは、探せないことが設計だけでなく購買・製造の側にも波及していて、部分対応では切れ目が別の場所に移るだけになる場合です。ただし、第3層と第4層がそのままリスクになります。接続は見積額で止まりうるし、機能過多は使われない理由になる。 入れ替えを選ぶなら、この2つを最初に潰す前提で組む必要があります。
3つのうちどれを選ぶかは、探す回数と外からの締切と、社内で「選ぶ一手」を残せるかで決まります。「一番いい方法」は、条件が違えば違います。
社内に上げたとき、何を聞かれるか
ここからは、実際の商談の場で観測された質問と反応です。技術・設計から上げる話は、二つの系統の確認を同時に受けます——決裁の系統と、情報システムの系統です。
まず決裁の系統。探す時間を減らす話は、たいてい効果の説明のところで止まります。
「空いた時間で何をするのか」は、決裁の場で繰り返し問われます。 これは意地悪な質問ではなく、決裁者にとっては当然の確認です。時間が浮くこと自体は、決裁の材料になっていません。何に使うかまで含めて初めて材料になります。
反対に、通らなかった示し方も分かっています。
- 時給換算による「◯◯円相当」という表現は、決裁の場で通用しませんでした。
- 削減人数や業務占有率を前面に出すと、人員を減らす提案として受け取られます。
第1節で触れた「3名分の負荷」のような言い方は、現状の説明としては通っても、効果の説明として出すと後者に化けます。 同じ数字でも、どちら向きに使うかで受け取られ方が変わります。
価格の見られ方には、はっきりした型があります。高い/安いは絶対額ではなく、代替される人件費1名分との比較で判断されます。 また、顧客が現に支払っている既存SaaSへの支出額が、新規提案の価格の妥当性を測る物差しとして機能します。 すでに何にいくら払っているかが、そのまま基準線になります。
時期の型もあります。初回のプレゼンの段階では、金額・予算感は問題なさそうという反応が繰り返し得られ、価格が問題になるのは初回ではなく、稟議と情報システム部門の確認の段階です。 初回の感触は、通過の予測にはなりません。そしてそこで出てくるのは、いまの金額の話とは限りません。現在の月額ではなく、保守や移行時に将来発生しうる費用に対して、高い・読めないという反応が出ます。
誰が語るかも見られています。推進者と承認者が別の人物であり、推進者が上申資料を自分の言葉で説明しきれるかが論点になります。 実務では、上申資料を、決裁者向けに翻訳した形で作り直すことになります。技術・設計から上げる場合、図面や部品表の話をそのまま持って行っても翻訳にはなりません。
次に情報システムの系統です。セキュリティ質疑では、2要素認証の方式と運用頻度・データの保管リージョン・バックアップの世代と復元可否・保存されるデータの範囲・アクセスログの保持期間・権限分離・入力データがAIの学習に使われない設定か、が問われます。 また、扱うデータの機微さを理由に、セキュリティ水準の引き上げを求められることもあります。図面と部品表は、その会社の設計そのものです。ここは避けて通れません。
最後に、現場側の条件を2つ。顧客は、確認と修正のために手入力しやすい画面を求めます。 自動化の話をしているときでも、人が直す動線が用意されているかは必ず見られます。そして、修正が永続的に蓄積されるかどうかが、比較の判断軸として提示されます。 直した内容が次に活きるか——第2節の第2層(「似ている」で引けない)を抱えている現場ほど、ここを見ます。候補を出す仕組みは、人が直した結果を覚えなければ、次も同じ候補を出すからです。
次の一歩
ここまでの内容は、機械・装置をつくる会社の技術・設計という職能で、当社の記録にある事実だけを並べたものです。自社の図面の枚数・部品表の深さ・外からの締切に当てはめたときにどうなるかは、話してみないと分かりません。
過去の設計を探す作業が週にどれくらい発生しているか、探す入口が何箇所に分かれているか、外からの変更をどこで受けているかを、実際の図面と部品表を前に一度整理する場を用意しています。
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