業務改善読了 約8

商社・卸の営業が受注を手書きの複写伝票で回す

AAnomaly編集部
目次

配管資材の商社・卸で、受注が手書きの複写伝票とFAXで入り、基幹へ人が打ち直している

配管資材を扱う商社・卸の営業部門では、受注の業務で手書きの複写伝票が使われています。FAXで届いた注文書を基幹システムへ人が打ち直している会社もあります。手書き伝票の処理は月末と月初に集中し、営業職能が手を空けられるのは朝一と定時後です。


受注が紙で入り、基幹へ人が入れ直している

配管資材を扱う商社・卸の営業部門では、受注の業務で手書きの複写伝票が使われています。 これは1社だけの事情ではありません。複数の会社で共通して観測されている運用です。

端末の話は単純です。担当者に割り当てられているのは、個人専用のPCです。特別な端末ではありません。

そのうえで、受注がどう入ってくるか。FAXで受信した注文書を、基幹システムへ人が転記入力している会社があります。届いたものを、もう一度、自分の手で打ち込む工程がそこに挟まっています。

打ち込む先も、いつも決まっているわけではありません。

  • 一部の商品は正規の商品コードを持たず、商品名のフリーテキストを伴う臨時コードで管理されている会社があります。
  • そして、その臨時コードは営業担当が個別に入力するため、全角と半角の混在および略称の揺れが生じているという記録があります。

つまり、打ち直しは「同じものを2回入れる」だけの作業ではありません。何のコードで入れるかを、入れる人がその場で決めている場面が含まれています。

最後に、いつやっているか。営業職能が手を空けられるのは、朝一と定時後です。営業時間の中では手が空きません。 そこに山が乗ります。手書き伝票の処理が月末と月初に集中している会社があり、その時期に残業が終わる時刻として 「夜20時台まで」 という水準が記録されています。これはある企業で観測された時刻であり、当社が測った値でも、業種の平均でもありません。

この記事では、この業種に掛かる業界規格(ISO 等)の話は書きません。また、物流・在庫の職能の場面も書きません。当社が確認できている一次情報が無いためです。 端末についても「個人専用のPC」までしか書けません。

あわせて、本記事が確認できているのは配管資材を扱う商社・卸の運用です。 同じ商社・卸でも、扱う商材が違えば帳票も締めも変わります。ここに書いたことが自社に当てはまるかどうかは、当てはめてみないと分かりません。


打ち直しは、4つの層が重なった結果として残っている

打ち直しが残る理由を「担当者が非効率だから」と説明することはできません。担当者は、届いた注文を、社内で使える形に変換しているだけです。問題は作業の速さではなく、受注の入口から基幹までの間に、切れ目が何段あるかです。

構造として見ると、切れ目は4層に分かれます。

第1層:入口が複数あり、どれも人が読む前提でできている。

手書きの複写伝票と、FAXで届く注文書。どちらも、相手の運用と噛み合っている限り、こちら側の都合で変える理由がありません。ただしこの入口は「人が見て、人が判断して、人が入れる」ことを前提にしています。前提が人である以上、その先の入力も人に戻ってきます。

第2層:打ち込む先の識別子が、人の判断を前提にしている。

ここが、この業種に固有の層です。正規の商品コードを持たない品目があり、その臨時コードは営業担当が個別に入力するため、全角と半角の混在および略称の揺れが生じています。 揺れは、入力した瞬間には問題になりません。後から名寄せしよう、集計しよう、検索しようとしたときに、初めて費用として出てきます。 第1層が「回数」の問題であるのに対し、第2層は「後から効いてくる」問題です。

第3層:つなごうとすると、費用と仕様で止まる。

ここには一次情報があります。既存の基幹システムへのAPI接続の追加は、基幹ベンダーの見積額により実現せず、CSV連携やRPAでの代替が検討される——これは製造業と商社・卸にまたがって、複数社で共通して観測されている事象です。つまり「つなげばよい」という結論の多くは、技術ではなく見積額のところで止まっています。止まった結果として残るのが、CSVの受け渡しか、人の打ち直しです。

第4層:入れ替えた道具が使われなくなる。

「では新しい仕組みを入れよう」という話は、たいてい一度は通っています。そして次のようになっています。

  • 既存の営業支援ツールが、顧客単位の管理で案件ベースに対応していないことを理由に使われていない
  • 既存の営業支援ツールが、入力が煩雑で画面が複雑であることを理由に使われていない
  • 導入済みのパッケージが、機能過多で費用も過大であり現場に合わないと評価されている

4層を並べると、打ち直しが残る理由が「意識」ではないことが分かります。入口の設計・識別子の設計・接続の費用・定着の失敗という、別々の層の問題が重なった結果として残っています。層が違うので、どれか1つを叩いても消えません。

とくに第2層は見落とされます。第1層(紙で来る)だけを潰すと、揺れたコードが今度は機械の速さで増えます。


この業種の受注に掛かっている制約

第1節で挙げたものは、営業職能が好きで選んだ形ではありません。業種と既存システムの側から決まっています。ここは事実だけを並べます。

  • 受注の業務で手書きの複写伝票が使われている(複数の会社で共通)。
  • 一部の商品は正規の商品コードを持たず、商品名のフリーテキストを伴う臨時コードで管理されている(ある会社の運用)。
  • 商品の一意の識別は、商品コードと寸法コードの複合キーで行われる(同)。
  • 手書き伝票の処理は、月末と月初に集中する(同)。

ここに、既存システムの側から掛かる制約が重なります。これは配管資材に限った話ではなく、製造業と商社・卸にまたがって、複数社で共通して観測されているものです。

既存の基幹システムには仕様上の制約があり、新しい仕組みをその制約に合わせられるかが問われます。 例えば、在庫品と引当品を別々に入力させるという制約が挙げられた例があります。

3つ目の「複合キー」と、この「別々に入力させる」は、同じことを別の角度から言っています。この業種では、1つの受注行を確定させるために、人が複数の軸を組み合わせて選んでいます。 商品コードと寸法コード。在庫品か引当品か。そして正規コードが無ければ、臨時コードを自分で作る。

締めのタイミングも、そこに重なります。 月末と月初は、手書き伝票の処理が集中する時期です。選ぶ判断がいちばん多く必要な作業が、いちばん時間の無い時期に寄っているという形になっています。


打ち手は3つに分かれる

以下は台帳の事実ではなく、上の構造から取れる選択肢の整理です。それぞれ向く条件が違います。

a
やらない——打ち直しを残す。

向くのは、対象の件数が少なく、朝一と定時後の枠に収まっており、月末月初の締めに影響していない場合です。この場合、仕組みを入れる費用と、定着させる手間のほうが大きくなります。第2節の第4層で見たとおり、入れて使われなくなるという結末は実在します。 何もしないことは、消極的な選択ではなく、条件によっては正しい選択です。

b
部分的に——打ち直しの一部を、候補提示と人の確認に置き換える。

向くのは、件数が増えていて、かつ間違いを人が拾える工程が残せる場合です。ここには一次情報があります。顧客の側から、精度が100点でないことを前提としてよいとし、候補を提示して人が確認する運用でよい、と表明された例があります。 つまり「全自動でなければ意味がない」という前提は、必ずしも発注側の前提ではありません。

この業種では、(b) は第2層と相性が良いという特徴があります。コードを人が選んでいる工程は、機械が候補を出し、人が1つ選ぶという形に置き換えやすいからです。選ぶ主体は人のまま、選択肢を作る作業だけを渡すという切り方ができます。

c
入れ替える——受け渡しの仕組みごと作り替える。

向くのは、打ち直しが複数の拠点・複数の職能にまたがっていて、部分対応では切れ目が別の場所に移るだけになる場合です。ただし、第3層と第4層がそのまま risk になります。接続は見積額で止まりうるし、機能過多は使われない理由になる。入れ替えを選ぶなら、この2つを最初に潰す前提で組む必要があります。

3つのうちどれを選ぶかは、件数と締めと、社内で「選ぶ一手」を残せるかで決まります。「一番いい方法」は、条件が違えば違います。


社内に上げたとき、何を聞かれるか

ここからは、実際の商談の場で観測された質問と反応です。商社・卸の営業から上げる話は、まず「どこへ上げるか」で最初の関門があります。

支店単独で進めず、本社・本部の正規のルートを通すことが条件として示された例があります。現場で合意が取れていても、そこは通過点にしかなりません。金額の性質も効きます。単発・少額なら本部長決裁もあり得るが、継続費用は本部長決裁では通らず上位の決裁が必要になるという線が引かれた例があります。月額で払う形は、この線の向こう側に置かれやすいということです。

上げた先で何を聞かれるか。打ち直しを減らす話は、たいてい効果の説明のところで止まります。

「空いた時間で何をするのか」は、決裁の場で繰り返し問われます。 これは意地悪な質問ではなく、決裁者にとっては当然の確認です。時間が浮くこと自体は、決裁の材料になっていません。何に使うかまで含めて初めて材料になります。

反対に、通らなかった示し方も分かっています。

  • 時給換算による「◯◯円相当」という表現は、決裁の場で通用しませんでした。
  • 削減人数や業務占有率を前面に出すと、人員を減らす提案として受け取られます。

価格の見られ方には、はっきりした型があります。高い/安いは絶対額ではなく、代替される人件費1名分との比較で判断されます。 また、顧客が現に支払っている既存SaaSへの支出額が、新規提案の価格の妥当性を測る物差しとして機能します。 すでに何にいくら払っているかが、そのまま基準線になります。

時期の型もあります。初回のプレゼンの段階では、金額・予算感は問題なさそうという反応が繰り返し得られ、価格が問題になるのは初回ではなく、稟議と情報システム部門の確認の段階です。 初回の感触は、通過の予測にはなりません。そしてそこで出てくるのは、いまの金額の話とは限りません。現在の月額ではなく、保守や移行時に将来発生しうる費用に対して、高い・読めないという反応が出ます。

誰が語るかも見られています。推進者と承認者が別の人物であり、推進者が上申資料を自分の言葉で説明しきれるかが論点になります。 実務では、上申資料を、決裁者向けに翻訳した形で作り直すことになります。支店から本部へ上げる構造では、この翻訳が2回必要になることもあります。

情報システム部門からは、別系統の確認が来ます。セキュリティ質疑では、2要素認証の方式と運用頻度・データの保管リージョン・バックアップの世代と復元可否・保存されるデータの範囲・アクセスログの保持期間・権限分離・入力データがAIの学習に使われない設定か、が問われます。 また、扱うデータの機微さを理由に、セキュリティ水準の引き上げを求められることもあります。取引先の口座と単価を扱う以上、ここは避けて通れません。

最後に、現場側の条件を2つ。顧客は、確認と修正のために手入力しやすい画面を求めます。 自動化の話をしているときでも、人が直す動線が用意されているかは必ず見られます。そして、修正が永続的に蓄積されるかどうかが、比較の判断軸として提示されます。 直した内容が次に活きるか——第2節の第2層(コードの揺れ)を抱えている現場ほど、ここを見ます。


次の一歩

ここまでの内容は、配管資材を扱う商社・卸の営業という職能で、台帳に記録のある事実だけを並べたものです。自社の件数・締め・コード体系に当てはめたときにどうなるかは、話してみないと分かりません。

受注がどの入口から何往復で入っているか、コードを人が決めている工程がどこに何箇所あるか、月末月初のどこで詰まっているかを、実際の帳票を前に一度整理する場を用意しています。


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