業務改善読了 約4

採算原価の属人化を解消する鍵は入力経路の見直し

AAnomaly編集部
目次

採算原価が属人化する原因は計算式ではなく入力経路にある

「うちの原価計算Excel、担当者が変わると数字が合わなくなるんです」——製造業や建築設備会社の経営者からよく聞く悩みです。多くの会社はこの問題を「計算式が複雑だから」「関数が古いから」と捉えて、Excelを作り直そうとします。しかし、本当の原因は計算式ではなく、もっと手前の「入力経路」にあるケースがほとんどです。


『原価計算のExcelが属人化している』は本当に計算式の問題か

採算原価(案件や品番ごとにかかった材料費・工数・外注費を積み上げて算出する原価)が「担当者によって数字が違う」「あの人にしか直せない」という状態になると、多くの会社は真っ先にExcelの数式を疑います。関数を見直す、マクロを組む、新しいテンプレートを作る——こうした対応は一時的に見た目を整えますが、数か月後にはまた同じ属人化が再発することが少なくありません。

なぜなら、数式そのものは正しくても、その数式に入ってくるデータの出所がバラバラだからです。計算式を磨くほど、実は問題の本質から遠ざかっている可能性があります。


実態調査:入力経路がバラバラな会社ほど原価が合わない

材料費:購買担当者が発注時に登録

発注のタイミングでExcelや購買システムに単価・数量を入力。現場の実際の使用量とズレることがある。

工数:現場の日報から転記

紙の日報や実績入力端末に記録された作業時間を、後日まとめて原価表へ転記するという運用が一般的とされています。転記の遅れや漏れが発生しやすい。

外注費:経理が納品書から入力

外注先からの納品書をもとに、購買担当者が納品時に実績原価を入力。案件との紐付けが手作業になりがち。

原価管理に関するコラム(GRANDIT)でも、材料費・工数・外注費それぞれの入力接点が異なる部署・異なるタイミングに分散していることが指摘されています。これこそが属人化の温床です。


計算式を整えても直らない理由

入力元データの粒度・タイミング・担当者が違えば、同じ数式を使っても結果は必ず属人的になります。計算式は「入ってきたデータをどう処理するか」のルールに過ぎず、「誰が・いつ・何を入力するか」という上流の設計を代替できません。

この数式、正しいのは分かる。でも入力する人によって単位も締めのタイミングもバラバラなら、そもそも比較できる数字になっていないのではないか?

入力経路が分散する典型パターン

1
紙の日報→Excel転記

現場が紙に書いた作業時間を、月末に事務担当がまとめてExcelへ転記。転記ミスと遅延が常態化する。

2
FAX発注書→手入力

FAXで届いた発注書の単価・数量を、購買担当者が都度手入力。同じ資材でも表記ゆれが起きやすい。

3
価格表PDF→都度確認

外注先や仕入先の価格表PDFを毎回開いて確認しながら入力するため、確認漏れ・最新版の取り違えが発生する。


解決の考え方:入力窓口を業務アプリに一本化する

ここで必要なのは「計算式の標準化」ではなく、「どこで・誰が・いつ入力するか」という入力窓口の一本化です。材料費・工数・外注費、それぞれ別の担当者・別のタイミングで発生するのは業務上当然のことなので、それを無理に一つの部署に集約する必要はありません。重要なのは、入力する「場所」を業務アプリの決まった画面に統一することです。

Before(紙とExcelが混在する状態)

現場担当者が紙の日報に工数を記入 → 事務担当が週次でExcelに転記 → 購買担当者がFAX発注書を見ながら別シートに単価を入力 → 経理が納品書を見て外注費シートに反映 → 月末に3つのシートを担当者が手作業で突合。突合作業自体が属人的なノウハウになっている。

After(業務アプリ画面での動き)

現場は実績入力画面から工数を直接入力し「登録」ボタンを押す。購買担当者は発注登録画面で単価・数量を入力すると、案件番号・品番に自動で紐付く。外注費は納品確認画面で入力するとその場で該当案件に反映される。すべての入力が同じ案件マスタ・品番マスタを参照するため、担当者が違っても数字の粒度が揃う。


業務アプリ化した後の姿

材料費・工数・外注費がそれぞれの担当者によって入力された瞬間に、案件別・品番別の採算原価集計画面に自動反映されます。担当者は「原価表を作る」という意識すら持たず、日々の業務入力(発注登録、実績入力、納品確認)をこなすだけで、経営者は採算ダッシュボードをリアルタイムで確認できるようになります。月末に出力される「採算原価一覧.csv」のような帳票も、手作業の突合なしに自動生成される状態が理想です。


自社で入力経路を棚卸しする際のチェック観点

1
誰が入力しているか

材料費・工数・外注費、それぞれ担当部署・担当者を洗い出す。兼任者がいる場合は特に注意。

2
どこで入力しているか

紙・Excel・システム画面・メモ、入力される「場所」が何種類あるかを数える。

3
何をトリガーに入力しているか

発注時、納品時、月末締めなど、入力のタイミングがバラバラだと原価の反映速度も担当者ごとにズレる。

この棚卸しを行うと、多くの会社で入力経路が5〜6箇所に分散していることが分かります。業種別の採算原価管理の考え方については、関連記事もあわせて参考にしてみてください。


まとめ

  • 採算原価の属人化は計算式ではなく入力経路の分散が根本原因
  • 材料費・工数・外注費が別部署・別タイミングで入力される限り、数式をいくら整えても数字は属人的になる
  • 解決策は「どこで・誰が・いつ入力するか」を業務アプリの画面に一本化し、入力した瞬間に案件別・品番別の原価が自動集計される仕組みを作ること
一覧に戻る

製造業のDXでお悩みですか?

Anomalyでは、製造業に特化した業務アプリケーション開発を行っています。まずはお気軽にご相談ください。