「今月も部品が足りない」「逆に発注しすぎて在庫が積み上がっている」——製造業の現場で所要量計算(MRP:Material Requirements Planningの略で、必要な資材の量とタイミングを計算する仕組み)を回しているのに、こうした事態が繰り返されているなら、原因はBOM(部品構成表)そのものではなく、その手前にある「前提データ」にあるかもしれません。
所要量計算の基本式が崩れる理由
所要量計算の考え方自体はシンプルです。
この式だけを見れば、Excelでも十分に計算できそうに思えます。実際、多くの中小製造業ではExcelのBOM表に数式を組んでこの計算を行っています。ところが現場では「計算結果が信用できない」という声が絶えません。これは計算式が間違っているのではなく、式に入れるデータそのものが揃っていないことが原因です。
担当者ごとにBOMシートを更新し、品目名は手入力。単位も「個」「本」「kg」が混在し、ロス率は担当者の経験と感覚で発注数に上乗せしている状態。
前提データ①:品目コードの一意性
最も見落とされやすいのが、品目コードの重複です。同じねじ、同じ樹脂部品でも、購買担当者と生産管理担当者が別々にコードを発行してしまい、システム上では「別の部品」として扱われてしまうケースが少なくありません。
同一部品が2つのコードに分散すると、在庫は片方にしか反映されず、所要量計算はもう片方のコードで「在庫ゼロ」と判定して発注をかけてしまいます。結果として、実際には十分な在庫があるのに発注が重複するという事態が起きます。
前提データ②:員数・単位の統一
員数(親品目1個を作るために必要な子品目の数量)は、単位が揃っていなければ意味を持ちません。「個数」「kg」「m」が混在した状態で計算式に代入すると、桁が合わない、あるいは単位変換を忘れて計算結果が10倍・100倍にずれるといった事故が起こります。
入力項目として「基本単位」「発注単位」を分け、画面上で選択式にすることで手入力によるブレを防ぎます。
「1本=1.2kg」といった変換係数をあらかじめ登録し、計算時に自動参照できる状態にします。
前提データ③:歩留まり・ロス率の反映
切削や成形工程では、加工中の削り屑や不良品発生により、投入した材料の一部が製品にならずに失われます。このロス率を所要量計算に反映しないと、計算上は足りているはずの材料が、実際の生産では毎回不足するという構造的な問題が発生します。
ロス率は工程や品目によって異なるため、BOM上の子品目ごとに「ロス率」項目を持たせ、必要数量=理論値×(1+ロス率)で計算する設計が基本になります。これを個人の経験値だけに依存させると、担当者が変わった瞬間に精度が崩れます。
前提データ④:購入品と中間品(仕掛品)の区分
BOMの中には、外部から購入する「購入品」と、自社工程内で加工・組立を行う「中間品(仕掛品)」が混在しています。この区分が曖昧だと、所要量計算は本来発注不要な中間品にまで発注をかけてしまったり、逆に本当に発注が必要な購入品を計算対象から外してしまったりします。
中間品を「購入品」として誤登録すると、生産計画側では製造指示が出ているにもかかわらず、購買側でも発注が走り、在庫が二重に積み上がる結果になります。
BOMの品目区分を整理する具体的な進め方については、ExcelのBOM管理から部品情報を自動連携する業務アプリ構築の手順で詳しく解説しています。品目コードの統一や区分整理を業務アプリ上でどう設計するかの参考になります。
前提データが整うと、所要量計算は自動で回る
品目マスタ画面で「品目コード」「基本単位」「ロス率」「品目区分(購入品/中間品)」を一元管理し、生産計画画面で親品目の生産数量を入力すると、BOMを自動でたどって子品目ごとの必要数量が算出されます。発注が必要な購入品だけが「発注候補一覧」ボタンから抽出され、CSV出力ボタンで発注書データとして出力される流れです。
この状態になれば、担当者がExcelで手計算・手集計する工程がなくなり、生産計画の入力から発注候補の抽出までが一本の流れでつながります。人によって計算結果がブレる余地もなくなるため、発注過多・欠品のどちらのリスクも構造的に減らすことができます。
在庫画面で「発注点」「安全在庫」を品目ごとに設定しておけば、所要量計算の結果と現在庫を比較し、発注点を下回った品目だけを自動でアラート表示させることも可能になります。
まとめ
- 所要量計算(MRP)の精度は、計算式ではなく前提データの整備状況で決まる
- 品目コードの一意性・員数と単位の統一・ロス率の反映・購入品と中間品の区分、この4つが崩れると発注過多や欠品が起きる
- 前提データが整えば、BOMからの所要量計算・発注点管理までを業務アプリ上で自動化でき、Excelでの手計算という工程そのものをなくすことができる
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