「先月また材料費が上がった。でも取引先への価格交渉の根拠をExcelで出そうとすると、担当者が3日かかる——」そんなジレンマを抱えながら、今月もキログラム単価の上昇分を飲み込んでいる射出成形メーカーの経営者は少なくありません。
【課題】Excel月次集計では価格転嫁が間に合わない|射出成形業の採算管理の現実
2026年現在、ABS・PP・PCといった汎用樹脂の調達価格は高止まりが続いているとされており、加えて金型製作費の上昇・エネルギーコスト増が射出成形メーカーの収益を圧迫しています。ものづくり白書2026でも、中小製造業における原価管理データ活用が重要な経営課題として取り上げられているとされるとおり、「どの品番が、どの取引先向けに、どれだけ赤字になっているか」をリアルタイムで把握することが経営の最重要課題になっています。
① 原価の構成要素が多い:材料費・成形加工費・金型償却費・廃棄ロス率の4つが品番ごとに異なり、月次でまとめてExcel集計するには手間がかかりすぎる。
② 取引先ごとに受注条件が違う:単価・ロット・納期が取引先ごとにバラバラで、一括管理しようとするとシートが膨大になる。
③ 材料価格が月単位で変動する:購買部門が仕入れ価格を更新しても、Excel上の原価計算に反映されるのが翌月以降になり、価格交渉のタイミングを逃す。
【設計】FlowSyncで構築する取引先別・品番別採算原価管理アプリの画面設計
FlowSync(フローシンク)は、ノーコード〜ローコードで業務アプリを内製できるプラットフォームとされています。ITベンダーに外注しなくても、自社の管理部門・製造担当者が画面設計を主導しながら、以下の構成でアプリを構築できます。
入力画面:品番マスタ登録
まず、品番ごとに以下の項目を登録します。FlowSync上では「品番マスタ入力フォーム」として1画面にまとめ、担当者がブラウザから入力できます。
品番コード・取引先名・月次受注予定数量を登録。取引先マスタとひも付けることで、取引先別の集計が自動化されます。
使用樹脂種別(ABS/PP/PCなど)・1ショットあたりの使用グラム数・最新kg単価・廃棄ロス率(%)を入力。材料費は「使用量×kg単価×(1+ロス率)」で自動計算されます。
金型取得価格・想定ショット数から1ショットあたりの金型償却費を自動按分。成形サイクルタイム(秒)×機械時間単価で加工費を算出し、粗利率をリアルタイム表示します。
FlowSyncのキモは、「材料kg単価」フィールドを変更するだけで、そのコードを使う全品番の原価と粗利率が即時再計算される点です。購買担当が仕入れ価格を更新した瞬間に、採算悪化品番がアラート表示されます。
画面遷移の設計
アプリは大きく1品番マスタ入力画面 → 2原価計算結果一覧画面 → 3取引先別ダッシュボード → 4価格転嫁根拠レポート出力画面、の4画面構成を基本とします。「レポート出力」ボタンを押すと、取引先別の採算比較データを「価格転嫁根拠レポート_取引先名_YYYYMM.xlsx」形式で自動出力する設計にしておくことで、交渉の度に資料を手作りする必要がなくなります。
【Before→After】手作業Excel集計から業務アプリ画面へ
製造管理担当者が受注実績・材料仕入伝票・金型台帳・廃棄記録を別々のExcelファイルから手でコピー&ペーストし、品番別採算表を月1回作成。作業時間:約3日/月とされています。材料費が月中に変動しても次の集計まで反映されず、採算悪化に気づくのが常に翌月。価格交渉の資料作成にさらに半日かかっていた。
購買担当が材料単価を更新(所要時間:約2分)すると、全品番の原価と粗利率がリアルタイム再計算。採算悪化品番(粗利率が設定閾値を下回った品番)は一覧画面に赤色アラートで即時表示。価格転嫁根拠レポートは「レポート出力」ボタン1クリックで自動生成。月次採算集計:3日 → 即時(リアルタイム)、価格交渉資料作成:半日 → 約3分に短縮。
具体的な数値で示すと、月に30品番・5取引先を管理していたあるケースでは、採算悪化品番の検知が平均32日遅れ → 当日検知に改善し、価格改定交渉の着手が大幅に前倒しされたとされています。
【ダッシュボード】取引先別粗利率ランキングと価格転嫁交渉根拠レポートの自動出力設計
FlowSyncで構築したダッシュボード画面は、経営者・営業責任者・製造管理担当の3者が同じ画面を見ながら判断を下せる構成にします。
全取引先の粗利率を棒グラフで降順表示。クリックすると取引先ごとの品番別内訳ページに遷移。どの取引先との取引が最も採算を圧迫しているかが一目でわかります。
粗利率が設定した閾値(例:10%未満)を下回った品番を赤表示でリスト化。品番コード・取引先名・現行受注単価・算出原価・粗利率・悪化開始日が一覧表示され、クリックで原価内訳の詳細画面に遷移します。
取引先・品番・期間を選択して「レポート出力」ボタンを押すと、「価格転嫁根拠レポート_取引先名_YYYYMM.xlsx」が自動生成。材料費推移グラフ・原価構成比・値上げ必要額が含まれ、そのまま交渉資料として使用できます。
このダッシュボードの最大の価値は、「数字の根拠を、その場で、誰でも説明できる状態を作ること」です。取引先との価格交渉において、「システムが自動計算した原価データ」は感覚ベースの値上げ要求より圧倒的に説得力があります。
FlowSyncはアプリを内製する設計思想のため、品番が増えた・新たな取引先が加わった・コスト項目に「運搬費」を追加したいといった変更を、外部ベンダーへの発注なしに自社担当者が対応できます。製造現場の実態に合わせてアプリを育てていけることが、中小射出成形メーカーにとっての大きなメリットです。
まとめ
- 課題:樹脂材料費・金型費の高騰に対し、Excel月次集計では採算悪化の検知と価格転嫁対応が常に後手に回る
- 設計:FlowSyncで品番・取引先・材料費・金型償却費・成形サイクル費・廃棄ロスを一元管理し、材料単価変更時に全品番の粗利率をリアルタイム再計算する仕組みを内製できる
- 効果:採算悪化品番の検知が32日遅れ → 当日に、価格転嫁根拠レポートの作成が半日 → 約3分に短縮され、価格交渉を根拠データで裏付けられる体制が整うとされています
- 次のアクション:まず主力品番5〜10点でパイロット運用し、材料単価の更新フローとアラート閾値の設定から始めるのが導入成功への近道